脳卒中

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脳卒中について

脳梗塞は他の身体疾患に比べてより長期入院治療を必要とします。先進国では、心疾患、がんについで3番目に多い死因です。また、重症で長期にわたる身体障害の最大の要因でもあります。先進諸国では、毎年人口10万人対300~500人が脳卒中に罹患しており、その約20%が4週間以内に亡くなります。日常の社会生活に復帰できるのは、わずか40%にすぎません。その3分の1は、生涯にわたって援助や介護を必要とします。その結果、健康保険制度において脳卒中にかかるコストが増大しています(2004年のアメリカ一国内で500億米ドル以上)。こうしたコストのほとんどは、急性期以降の介護に費やされています。社会の高齢化を反映し、脳卒中の発生頻度は今後10年間で約30%程度増加すると予測されています。

 

脳卒中の病理

脳卒中には、脳内の血管が血栓によってふさがれる虚血性脳卒中と、血管が破裂する出血性脳卒中があります。血管の閉塞あるいは破裂により、脳に十分な血液が供給されなくなります。すると、患部にある神経細胞が酸素不足に陥り死滅し、その結果、神経細胞によって制御される諸機能が損なわれ、動作や運動神経障害あるいは言語障害、四肢の無感覚、精神錯乱、認知障害などが生じます。
脳卒中発症により、一連の局所的なイベントがさらなる脳細胞損傷を引き起こします。この過程は虚血連鎖と呼ばれ、エンドトキシン効果、再灌流障害、炎症反応などを含んでいます。一度死滅した脳細胞を代替することはできないため、脳卒中によりもたらされた損傷は生涯残ります。その影響は、脳組織の損傷部位や範囲によります。繰り返し脳卒中発作が生じることによる長期的な影響としては、程度の異なる麻痺や認知機能や言語機能の損傷あるいはうつなどがあります。

 

脳卒中の治療

虚血性脳卒中と出血性脳卒中ではメカニズムが異なるため、両者の治療法は異なります。全体の85~90%を占める虚血性脳卒中の場合は、血栓を取り除き、脳に血流を再灌流する治療が行われます。一方の出血性脳卒中に対しては、出血を止める治療を行います。
今日、ヨーロッパおよびアメリカで急性虚血性脳卒中の救急処置に認められている唯一の薬剤は血栓溶解薬rt-PAであり、血栓を溶かす効能があります。しかしrt-PAを使用できるのは発作開始後3時間以内であり、その治療の可能性は限定されています。この短い猶予時間内に病院に到着できる患者は少なく、現在、急性虚血性脳卒中を発症して救急処置を受けられる患者はごくわずかです。脳卒中特別集中治療室にたどり着き、治療を受けられる患者は約1%にすぎません。

 

急性虚血性脳卒中治療薬デスモテプラーゼ

デスモテプラーゼは、選択性が高く強力な血栓溶解薬であり、臨床試験が示しているように、発作開始9時間まで安全に使用することができます。デスモテプラーゼはプラスミノゲン・アクティベータです。遺伝子工学によって合成されたタンパクは、吸血コウモリの唾液Desmodus rotundusから発見されました。吸血コウモリは哺乳類の血液を唯一の食糧としていますが、Desmodus rotundusにより血液の凝固を阻害することで摂食することができるのです。

 

デスモテプラーゼ―臨床結果

すでに終了している第二相臨床試験から得られた肯定的なデータとしては、デスモテプラーゼは発作後9時間の猶予時間内であれば脳卒中治療に対する有用性が認められました。DIAS研究は、急性虚血性脳卒中患者の二重盲検プラセボ比較試験でした。半影部の有無により診断された104人の患者を対象に、症状発現後3~9時間以内にデスモテプラーゼ静脈内ボーラス投与群とプラセボ群に割り付けました。デスモテプラーゼ90μg投与群と125μg投与群では、閉塞血管の再灌流率は、それぞれ47%、71%でした(プラセボ群18%)。治療開始90日後、デスモテプラーゼ90μg投与群の47%、125μg投与群では60%で有意に臨床的な効果が認められました(プラセボ群22%)。閉塞動脈再開後の副作用として知られる大脳内出血(sICH)発症率の合計は、デスモテプラーゼ投与量両群で3.3%でした。
第二の第Ⅱ相臨床試験DEDAS研究は同じ研究デザインであり、対象者は38人でした。総体的に、DEDASの結果は、先行研究DIASで示された安全性と有効性を裏づけるものとなっています。
急性虚血性脳卒中患者に対するデスモテプラーゼの最初の第三相臨床試験は、ヨーロッパと北アメリカ、オーストラリアとアジアで実施されています。

 

<参考文献>

Reddrop C, Moldrich RX, Beart PM, Liberatore GT, Howells DW, Schleuning W-D, Medcalf RL
『吸血コウモリ唾液中のプラスミノゲン・アクティベータ(デスモテプラーゼ)が誘発興奮性損傷相乗作用を抑制』Stroke 2005年36号1241-6頁
Hacke W. Albers G, Al-Rawi Y, Bogousslavsky J, Davalos A, Eliasziw M, Fischer M, Furlan Am Kaste M, Lees KR, Soehngen M, Warach S.
『急性虚血性脳卒中臨床試験(DIAS)におけるデスモテプラーゼ:第二相MRI・9時間枠急性脳卒中血栓溶解試験での静脈デスモテプラーゼ』Stroke.2005年36号66-73頁


 

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